釜めぐりの舞(湯立の行)
「宮めぐりの舞」が終わると、舞方は湯立を行う者と交代をして獅子頭をかぶる。神社を背にして、石段の降り口に宮めぐりの時と同じ姿勢で並ぶ、絶えず呪文を唱えることと、鳥居までの道開けの規制は前と同じに厳格に守らなければならない。しばらくして、獅子等は剣を腰に差し、剣を抜いて左手に持ち、鈴を右手に持ち、塩振りの先導で七五三の節度で剣を合せながら階段を降り、湯釜の前まで進み、湯釜を正面にして停止する。このとき曲は祇園噺である。いよいよこれから「湯立の行」の本番に入るのであるが、七五三の
脇役二人は忌竹のそばで終始一心に湯ざましの呪文を唱え続ける。塩振りは呪文を唱えながら塩を振って釜場を浄める。
・・・・・写真の下へ続く。
前しやぎりの曲が終って幕の舞が始まる。二人立ちで後持ちが付き、辻は宮舞の辻と同じであるが、釜があるので釜の周囲を廻って辻にしたがい七
五三の節度を付けて力強く踏みしめて舞う。
釜に向って進むときは最後の右足は燃えさかる火の中に力強く踏みこむ。素足にわらじの装束であるので火は容赦なく足裏に入り、見ている者は肝を冷し固唾をのむ。
しかし、精神を統一し、邪心を払った舞方にはこの状態にも一こう感じない。唯一心不乱呪文を唱えて舞い続ける。
次に幣の舞であるが歌は大平楽である。宮舞の幣の舞の辻にしたがって各辻々を廻り正面に戻る。幣の舞が終り、獅子は一たん剣を鞘ごと左手に持ち、鈴を右手に、前の宮めぐりのときと同様七五三の脇役三人で釜を背に姿勢をとって一心に呪文を唱える。このときの鳥居までの道開けの規制は前と同じ厳格に整理される。太平楽の歌が終ると引続き「げにやしんこく」の歌がある。歌が終る頃になると、今までぐらぐら煮え沸っていた大釜の湯も心なしか沸りをしずめ、見る者、演ずる者一そう緊張し、神秘の境に引き込まれるような心境となる。
歌が終ると笛の曲が変って、獅子は剣を鞘ごと腰に差し、剣を抜いて左手に持ち、鈴を右手に釜の前に戻る。獅子は一人立ちで、法にしたがって七五三の節度で前に出後にさがってその都度剣を合わせ、次の辻に進む。この際も釜に向って進む辻では、最後の右足を強く火の中に踏み込む。見る者せき一つなく、ただ獅子の動作に目を引き付けられる。法にしたがって釜を一巡して正面に戻ると、獅子は剣を納めて、いよいよ最後の神事である「湯ざましの法」にかかる。獅子は塩振りの先導で、設けられた湯棚の前に進み、二本束ねられた幣束を右手でとり、左手を添えて湯釜の正面に戻る。湯釜の前で幣束を拝むようにいただき、湯ざましの呪文を三回唱え、幣束を右手に持ち、右足を一歩前に踏み出し、幣束を高く挙げて、「風」の字を大きく空間に書く。右足を元に戻して幣束を持ったまま二柏手する。この同じ動作を三回繰り返し行なう。
今度は右手に持った幣束を高く棒げ、幣束を逆さに
して釜の中につっこみ、釜の中を幣束でゆっくり三回かき廻し、そのまま幣束を持ち挙げ、水平の位置で左手を添えて二柏手する。この同じ動作を三回繰り返し行なう。このとき塩振りは右手の手のひらで幣束からひたたり落ちる湯を受けて湯がさめたか否かを確かめる。熱湯は神楽の法力によって完全にさめているのである。獅子は幣束を湯棚に納めて、今度は右手に笹束を二束持って釜の前に進む。右足を一歩大きく前に出し、右手で二乗の笹束を高く棒げて笹の頭から釜の中につっ込み大きく三回かき廻す。
このとき、かきまわす際湯はこぼれて舞方の素足にふりかかるが一向に熱さを感じない。塩振りの先導で、小とびにて湯棚の前に進み献上する。これを三回繰り返す。以下同じ方法で石段を一きょに駈け上り、神社の拝殿にて三回献上し、山の神社に一回献上する。次に神楽の噺方に一回、あとは集まった氏子に適宜振りかけ厄を払う。この湯をかけると一年間無病息災の霊験がある。
獅子は笹束を湯棚に納め、「くるい」が付き、後しやぎりで湯立の行を終る。
金時山山麓に立つ神社で、金太郎のモデルになった平安時代後期の武士、源頼光[みなもとのよりみつ]に仕え四天王の1人に数えられた坂田公時(さかたのきんとき)が 祭神として祀られています。毎年子供の日には「公時祭まつり」が行われ、国選択無形民俗文化財に指定されている“湯立獅子舞”が披露されます。
参拝者様、専用駐車場がございます。